さて、前回では、「ピケティ」論による不動産投資についてお話をしました。ここからは、不動産投資の「リスク」について考えてみたいと思います。
不動産投資のリスクには、いったいどんなものがあるでしょう?投資する物件により様々な要因が考えられますが、どの物件にも共通して上げられる一番のリスクは、「空室が増えることによる収益の悪化」だと思います。
所有している賃貸物件の空室が増えれば、当然、空いている部屋からは家賃が発生しないわけですから、銀行から資金を借りている場合、借入金の返済が滞るという事態を招くことになります。
このままでは借金が返せないかも・・・
ヤ、ヤバイな、これは・・・
・・・ゴフッ
この状態。いわゆる、デフォルト(債務不履行)です。
最近、良く耳にする言葉ですが、そこで、不動産投資における「デフォルト」を少し検証してみましょう。
■ 1部屋より100部屋貸す方が安全な訳
通常、不動産を購入する際は、銀行などから借入を行います。この時の返済年数は、新築の場合、木造で約20年。鉄筋コンクリート(RC)で、約30年になります。購入した不動産から入る家賃収入で、銀行から借入れたお金(元本と利息)を支払って行くわけですが、ここで重要になってくるのが、全体の返済比率です。
投資物件の資金を、全て金融機関からの融資により調達した場合、この返済比率は一般に、年60~70%ほどになります。仮に1棟6世帯のアパートを新築し、銀行から5000万円を借入れたとします。年利回り8%で計算すると、1年間の家賃収入は400万円になります。
この返済率を60%で試算すると、(240万円/年)となり、月に換算すると(20万円/月)となります。年間の家賃収入400万円から一部屋当たりの家賃を割り返すと、平均5.5万円となりますので、単純に計算すると、3.6部屋の空室が発生すると、自力での返済が困難な状況となります。
既にお気付きだとは思いますが、賃貸する部屋数と返済が困難になる可能性(返済危険度)は、反比例の関係を示します。部屋数が減るほど危険度は増加します。つまり、100部屋の賃貸物件を建築したとして、その半分の50部屋が空いたとします。しかし、残り50部屋分の家賃が入れば、収益の悪化こそ招きますが、返済不能にまでは陥りません。しかし、仮に貸す部屋が1部屋だった場合(テナントやコンビニなど)その1部屋が空けば収入は「0」となり、銀行から資金を借りている場合、返済が出来ない状況となります。
家賃収入が減り、銀行への借入金に充てる原資を、自らのサラリーや他の預貯金で補填する事態に陥った場合、よほど資産に余裕がある人(ピケティの言う人口全体の10%の人)では無い限り、長期的に持ちこたえることは、まず困難だと言えます。
■ ホワイト・ナイトは・・・
昨年から今年にかけて、世界中を震撼させたギリシャ危機の場合は、欧州中央銀行が金融支援を延長し、救いの手を差し伸べました。2010年にJALが経営破綻をした際は、銀行が債権放棄をし、さらに法人税を免除するという禁じ手までも使い、国が救済に当たりました。一国の経済危機や社会的に影響の大きい企業の倒産であれば、必ずと言っていいほど手を差し伸べてくれる白馬の騎士が現れますが、個人の不動産投資の危機は、誰も助けには来てくれません。
じゃあいっそ、何もせずにじっとしていれば?普段の生活で、あとは銀行の預貯金程度でいいわ。と言ってしまっては、そもそも投資と言う損得が日々ついて回る世界とは無縁に生きて行く方を選択すべきです。しかしその未来は、「ピケティ」論の「資産を持っているのは人口全体の10%で、その人達が全体の60%~70%の資産を所有している」そして、我々は残りの普通の人90%で、景気が上向いたときに得られる賃金の上昇程度で、一生を終える。メデタシメデタシ。という事になります。
投資である以上、「リスク」は付き物です。それでも私が、敢えて不動産投資をお勧めする訳は、不動産は株や先物と違い現物所有の取引であるという点からです。
次回はそのお話をご紹介したいと思います。実務を学べば不動産投資は決して危険な「賭け」ではありません。
不動産企画部 山口